新友会政策モニター研修会開催
開催日 平成28年7月16日(土)
場 所 メルパルク長野
講演会
“長野の大地“が海から山へと移り変わってきた生い立ちをもつこと、そして現在もその動きは続いており、これからも災害と向き合っていく必要があることなどを講演いただきました。
演題「長野の大地に学ぶ」~災害との関係~
講師 戸隠地質化石博物館 田辺 智隆(たなべ ともたか)氏
1.長野の大地の生い立ち・・・太古はクジラやサメが泳ぐ海。
噴火や隆起・地すべり・洪水で今の姿に
〇戸隠山の生い立ち・・・海底の地層が隆起した化石の山
約500万年前、海底であった戸隠山は海底火山の噴火によってできた地層からできている。
その地層の中から貝やホオジロザメ・クジラなどの化石が見つかっている。
約200万年前から隆起が始まり、現在の山ができた。
日本一隆起が激しい山であり、大きな地震の繰り返しでできたものと考えられる。
その後、何万年にもわたる浸食が進み、のこぎりのような独特の形状となり、天の岩戸伝説を生み、山岳信仰の霊場となった。
〇裾花川・犀川・千曲川の誕生・・・大峰面(標高1,000m~800mの平坦面)が川の名残
約300万年前から北アルプス一帯の隆起が激しくなり、長野一帯の海は北アルプスから運ばれた土砂で埋まり浅くなっていった。こうした土砂を運んだ名残りが、裾花川・犀川となっている。そして海岸平野となったこともある。戸隠のバードラインを登っていくと、急に視界が開け北アルプスが見える場所があるが、これが約200万年前に裾花川や犀川が流れていた平野の跡で、大峰面と呼ばれている。
〇飯縄山の生い立ち・・・噴火の繰り返しでできた成層火山で水を持つ山
こうした地形の上に、約50万年前から噴火を繰り返しながらできた成層火山が飯縄山。約20万年前は標高2500mの富士山型の山であったが、西側の山体部が大きな噴火で崩れた。越水ケ原はその名残である。噴火を繰り返してできた地質で、隙間に水を蓄えやすく、山麓には豊富な湧水が沸いている。南向きのなだらかな地形もでき、住居、農地、薪炭林等に利用され、水や食料、エネルギーに恵まれた場所である。
〇長野盆地の誕生と善光寺地震・・・活断層と河川の氾濫でできた平野
戸隠山や飯縄山など西山地区が隆起し続けるのに対し、善光寺平は逆に沈み込み、盆地となっていった。善光寺平には千曲川や犀川など河川が流れ込み、山手の方は谷が侵食され深くなっていく。そうした大地の動きは現在も続き、その動きのひとつが善光寺地震である。1847年に長野盆地西縁断層が大きく動き、M7.4の直下型地震を引き起こし、山崩れや火災で多くの犠牲者を出した。さらに岩倉山の崩壊により犀川がせき止められ、上流の地域は水没し、その後の決壊により大洪水となった。善光寺平はその後何度も洪水に見舞われた水害多発地である。
2.長野の大地から学ぶ・・・動き続けている大地と向き合い、生き抜く知恵を恵む
〇長野県神城断層地震・・・長野盆地西縁断層への影響
2年前の11月に発生した長野県神城断層地震(M6.7、長野市で最大震度6弱)は、震源地が白馬であるのにもかかわらず、善光寺や若槻・浅川周辺でも被害が集中した。善光寺地震を引き起こした長野盆地西縁断層に沿って揺れが増幅された可能性が考えられる。くわしくは調査中であるが、本市の防災にとって糸魚川-静岡構造線で地震があった場合も、注意しなければならないだろう。最近の活断層を発掘する調査では、善光寺地震級のM7より大きな地震は900年~850年間隔で発生したので
はないかとされている。しかし、日本列島が地震の活動期に入ったと考えられ、M6級の地震はどこででも発生してもおかしくない状況である。
〇動き続ける大地・・・個々の防災の意識が減災に
我々の住む星「地球」は生きている。大地は動いていて当たり前という覚悟を持ちたい。長野の大地は噴火・地震・地すべり・洪水があった事でできた大地であり、その痕跡はいくつも確認できる。 防災よりも、被害をいかに減らすかという発想が必要で、それは住んでいる人々の意識を高めることである。自分たちの住む家の構造や地盤を知ることや、地域の方々と共同で地質を調査するなど防災に対する意識作りが必要と言える。
〇育った場所を誇りに思い、未来を見据える
長野の大地は素晴らしい自然や歴史を持つ。先人達は自然を生かし、それぞれ地域の地質にあった特産品を作り出し生きてきた。それは、人々の経験からくるものであるし、大地の生い立ちから生まれてきたものでもある。大地の生い立ちを学び、知恵を磨き、災害から身を防ぐ。そして新しい特産品をつくりこの地域で生き抜く。皆さんとそのような知恵を育んでいく勉強を博物館で行いたいと思っている。是非、戸隠地質化石博物館においでいただき、一緒に勉強させていただきたい。
講演に対する主な感想をご紹介します
多くのモニターの皆様に好評をいただき、地質科学の分野からの本市の成り立ちの原点を見つめ直す良い機会となりました。
私達も新たな視点で行政課題に取り組んで参りたいと思います。
「長野の大地の生い立ち」や「地域の地質」についてお知りになりたい方は、戸隠地質化石博物館へお訪ねください。
戸隠地質化石博物館
〒381-4104
長野市戸隠栃原3400
TEL:026-252-2228
URL:http://www.avis.ne.jp/~kaseki/
懇談会
新友会政策モニター制度は、日頃から恒常的に市民の皆様の意見を伺うための制度で、政策モニターの皆様によって市政に対する要望や意見などをいただいております。新友会では市政への要望書として提出し、市政に反映されるよう努力しております。
講演会終了後、テーブルごとにモニターの皆様と新友会議員による懇談会が行われ、モニターの皆様から市政・市議会に対するご意見・ご要望・ご提案をいただきました。その主なものにつきましてご紹介いたします
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市議会について
●もっと議員と、身近に話しをする機会が欲しい。
●視察で学んだことをどう市政にいかしていくか?報告して欲しい。
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新庁舎・芸術館関係について
●市民会館の入り口がわかりづらい。
●芸術館行事スケジュール等、ロビーなどにもっとわかりやすく。
●子どもたちが使用する際には減免をしてほしい。
●(芸術館利用者には)駐車場代は無料化すべき。
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住民自治協議会について
●住自協の役員選出が困難になっている。
●自治協議会へ様々な事業が丸投げになっている感がある。
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防災対策について
●河川の氾濫を想定した、防災対策が必要である。
●防災マップについて行政より指導が欲しい。また、議員も参画した対策が必要。
●中山間地域等地理的・地形的な要因からの防災対応(地滑り・急傾斜・水害)が必要である。
●空き家対策特別措置法により、老朽化住宅対策を加速する必要がある。
●ゲリラ豪雨が今後心配、生活道路や都市型災害への対応策が必要である。
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人口減少と高齢化対策について
●若者の県外流失防止対策が最優先。
●放課後こどもプランは中山間地域では、ほとんど全員が登録。有料化には反対。
●こども手当の充実は、高校生、大学生になっても必要。扶助を期待する。
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中山間地域について
●旧合併町村の合併以前からの公共施設は、維持、運営には大変な労力が掛かっている。
後世に引き継いでいくためにも地域の宝として活用していただきたい。
●中山間地域においても雇用の確保ができるように考えて欲しい。
また、賃金などに置いても、地域間格差、所得格差がでないよう考えて欲しい。
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公共交通について
●公共交通相互の連携が悪いため、乗継等に不便を感じている。
●巡回バスの利便性が悪い、高齢者が朝夕利用しやすい巡回バスの対応を願う。
●市街地に於いてもデマンド方式のバスの運行方法を検討してはどうか。
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商工・観光について
●長野市の観光地、観光資源の活用が不十分。
●長野市は宣伝力が弱い。いつも身内だけで盛り上がっている感が強い。
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農林業について
●鳥獣対策の充実が必要。困っている。
●農業振興条例もいいが、耕作者(地主)の中には手放したい方も大勢いる。
農地を守るばかりに特化して農家を助けることになっていない。
●ふるさと納税返礼品に農産物などの特産品をつけてほしい。
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その他のご意見
●長野市の公園は、犬を連れて入ることができない。改善を願う。
●他市のまねではなく、独自の発想でまちづくりの施策を実施されたい。
●空き店舗の活用として、若者(大学生等)に託した街の活性化が必要。
モニターの皆様から多くのご意見をいただきました。
私たち会派の政策提言の参考にさせていただきます。